サラリーマンの知ったかぶり

法学修士のサラリーマンが(なぜか法学以外の分野の)研究を読んだ感想を自由気ままに書いています。同時に、無類のドラマ好きでもあるため、ドラマについてもあれこれ書き殴って行きます。

苅谷剛彦、本田由紀編『大卒就職の社会学――データからみる変化』①

苅谷剛彦「大卒就職の何が問題なのか――歴史的・理論的検討」(序章)

【目的】

「大卒卒業者の就職」に関する社会学的研究がどのような意義を持つのかについて、先行研究を検討を通して明らかにする。 

【検討】

就職研究の原点は、学歴格差の問題視にあった

・日本的雇用慣行(新卒一括採用、長期雇用)と「推薦依頼大学」制度が結びつくことで、教育から職業への移行時点における学歴による選抜がその後の人生を決定する「唯一」のチャンスとなった=学歴の身分化

・「学歴の身分化」の意義:企業特殊的な人的資本形成のチャンスの閉鎖化を意味する

経済合理性が認められた指定校制度(1970年代以降)

・「推薦依頼大学」→指定校への変化により、閉鎖性は(ごく僅かに)改善したといえるものの、学校歴による就職機会の格差は強く残る

・大卒者の急増により、「学歴インフレ」や大卒者の「質」が問題化/高校進学率の上昇に伴う学力による選抜の大衆化(ペーパー試験で入学の可否を判断されることが一般的になっていった)→学校歴による就職機会の差異は、質の高い大卒者を採用するための選抜として肯定される

日本的雇用慣行にマッチした新卒一括採用

・欠員補充の欧米 ⇔ 定期一括採用の日本=職務を想定しない採用→潜在的能力としての「能力」に基づいた人材獲得競争が行われる

・学歴=潜在的な可能性を示すシグナル

「期限つき資本」としての学校歴

・学校歴→初期配属への影響:○

・学校歴→昇進への影響:×

・学校歴→初期配属→昇進:学校歴の高い者ほど能力獲得・発揮の機会が与えられ、昇進する可能性を多く有することになる

大卒就職研究における現代的課題

①新規大卒労働市場の構造的変化

②①による就職活動の変化

③②における採用基準の変化

【雑感】

・学歴格差として問題視されていた学校歴による選抜が、学歴インフレや選抜の大衆化によって肯定されていった過程について

→企業は、どのような経験によって学校歴による選別が合理的であると実感したのか

→企業が求めていた「大卒らしい大卒」とは、本当に質の高い大卒だったのか(そこで求められていた質の高さとは何であったのか)